弟子入りを断られる理由 その6

「経絡治療のすすめ」首藤傳明著 医道の日本社刊があります。

学生時代2年生の時に読みました、衝撃的な鍼灸の世界でしたね。

やくざみたい、仁義なき世界を知りました。

同級生を見ていても、ちょっと普通の世界じゃないなとは思っていましたが、卒業するともっととんでもないものだと知った本でした。

最初に弟子入りの2例が書かれていて、どちらもトンデモ弟子だったということです。

最初は2時間もバス出来て、夫婦そろって床に頭を擦り付けるようにして、断ったのにどうにかして弟子にしてくださいと言うもの。

そろそろ約束の2年に近づき、あと少しで免許皆伝を授けようと思っていたそうです。

その日待てど暮らせど来ないので、心配になって電話を掛けると「患者がたくさん来るようになったので、もう行きません」と答えたそうです。

もう一人は2年の修業は無事終了したそうです。

みていると自分の家からたった500メートルしか、離れていないところで開業したそうです。

この御弟子さんとは今は良くお付き合いするようになったと書いてはありますが。

でもどちらも一般社会ならバカヤローでしょ。

だから弟子入りなんて簡単にさせてもらえないんですね。

私自身は弟子入りした経験はないのですが、見聞きした弟子入りを嫌がられる理由を書いてみましょう。

1 治療院自体繁盛していない。技術があって治せても、それに比例して必ずしも繁盛はしないので、やはり患者数が少ない先生は断ることが多いそうです。

2 治せる技術と教える技術は比例しないので、特に感覚を言葉に置換えることができないと、教える方も教わる方も苦労します。

3 教えればそれだけライバルが増えるわけで、その点はシェフや料理人職人の世界と異なるところでしょう。2年なり10年なり低賃金んで働き、その代り技術を教えてもらうところと、無償で技を教えてもらうのは根本的に違います。従業員になったら教えてもらえません。

4 あるツボの使い方を教えたとして、それを実践したら効かなかった。先生はそれを使いこなせるまで経験と研究をしてきて、そのツボを使いこなせるようになったのです。教えてもらったものは、そこのところを飛び越して使うわけなので、効かなかったときどうするか。弟子の資格があるようなものは「自分の力不足だった」と反省すだろうし、それ以外は「あのやろう変なツボを教えやがって」と思い、へたくそだあの先生はと悪口を言いふらすかもしれない。だから弟子入り許可は慎重であり、簡単には技術を教えないのです。

5 弟子入りした経緯を聞くと、学校の先生とのつながりでと言うものもあるようです。これだとかなり確率は良いようですが、自分が希望する技術か否か、希望するものと合致するか否か、それはちょっと心配ですね。

6 昔は東北の次男三男が東京に出てきて鍼灸師に成り、学校の先生にもなったりしていると同郷のよしみとやらで弟子入りも結構あったみたいです。

7 弟子入りを許すのは師匠にとっては、無償の愛みたいになっているわけです。医師なら10人程度の生徒、それ以上でも同時に教えることも可能でしょう。また何かしら技術を考えて
特許を取れなくても、それを発表することで、なにがしかの栄誉や報酬が得られるはずです。鍼灸師にはそれが全くと言ってもないのです。学生時代先生が言ってましたっけ。「この鍼の感覚
が得られたときは、こんな病気がある。そんなことは多くの先生は分かっている。でもそれを本になんか書かない。それを乗り越えて弟子をとるというのは、師匠にとっても大きな決断になる
ということでしょう。

8 これは7に関連することですが、治療症例を載せていて多くのツボが書かれています。私もそのような本を1年生の時かなり購入してしまいました。その本の評判をきいて「治った、治せた」と言う鍼灸師はいませんでした。つまり載せているツボがでたらめに近いか、無関係なツボも載せていたのかでしょう。名声だけあるところに弟子入りしても、もしかすると治せる鍼灸師には成れないかもしれません。逆に意外とそのような先生の弟子には入りやすいかもしれません。

9 礼儀を知らないものは受け入れてもらえないでしょうね。

時代の風潮に晒されているので仕方ないでしょうが、今は教育もお金を出せば受けられると考えられてきています。しかし鍼灸の世界では今まで書いてきたように、本や学校の授業では決して得られない、知

ることができないシステムになっているのです。25年前学生時代のことでしたが、新入生が学校の規律を守らないことがありました。私がちょっとアドバイスしたせいか、翌年から面接重視になり元のよう

に一定の常識決まりを守る生徒が入学してきました。教科書に書いてある治療方法なんて、最大公約数てきな毒にも薬にもならないことが書いてあります。代田文誌の処方などやって聞いたということは皆無

です。私は本を開けてすぐこれじゃ治せない、分からないように書いてあるのじゃないかと疑りましたね。今まで治療は気が重要と書いてきましたが、本を読んでもDVDを見ても鍼灸家の気を得ることはで

きません。良く物真似タレントがご本人を本当に好きになるところから始めるのだと言ってます。ご本人に会って何か言われました?と聞かれて、逆に励まされましたと答えてますね。あれですよね!師と仰

ぐ人を尊敬しないで弟子になろうというのは間違ってます。まず尊敬すればきっと弟子入りはかなうでしょう。

あと間違いの多い弟子入りは自分が同様な技術を得たいのか、そもそも自分は何しに鍼灸の道を目指して入って来たのか、そこを考てないんじゃないかという学生が多いことです。職業の一つとして考えてい

るのでしょうが、鍼灸を職業とするにはあまりにも厳しい世界です。ちょっと前は柔整師資格を取って整骨院をひらけば、会社も家も建てられた時代は遥か昔の話になってしまいました。シャツを選んでくれ

た店員は柔整師の学校を卒業したと言っていました。リハビリなどを行う理学療法士も数年前は引く手あまたでしたが、介護施設の建設が一段落した今は就職難とも聞きます。様々な資格の現場でそれだけで

は安泰の時代は無くなってしまいました。鍼灸も弟子入り無くしては未来が無いと私は考えるのです。

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